昔から知られていた梅の殺菌効果

昔から知られていた梅の殺菌効果

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大昔から、梅の実(鳥梅、梅漬け、すっぱい梅干など)は、殺菌作用に優れ、消化管感染症に卓効があることが知られていました。

 

当サイトでご紹介している青梅のしぼり汁を煮詰めてつくる梅肉エキスも、健康の保持・増進に多くの人々に愛用されています。

 

日本の食薬品として最もポピュラーなのはすっぱい梅千で、体験に基づくさまざまな効用が伝えられています。

 

梅干しはどの家庭においても欠かすことのできない「常備薬」的な存在だったわけです。例えば江戸時代の『飲膳摘要』には「梅干の七徳」というのが出ています。

 

梅干の七徳

  1. 毒消しである。ゆえに、うどんには必ず梅千を添えて食べた。
  2. 腐るのを防ぐ効あり。夏には飯びつの底に梅干をひとつ入れておけば、その飯は腐らない。
  3. 病を避ける効あり。旅館では必ず朝食に梅干を添えるのを一般の例とする。
  4. その味変えず。
  5. 息づかいによい。走る際、 一粒口に含めば息切れせず。
  6. 頭痛を医するに効がある。婦人頭痛するごとに、これをこめかみに貼るを常とす。
  7. 梅干よりなる梅酢は、流行病に効ある。

 

このように古い時代から、梅の殺菌効果をはじめ、さまざまな梅の効用は人々に知られていたわけです。

 

コレラに効き目がある梅

 

江戸時代には、現在のように疫病等の検疫制度が完備していません。そのため、江戸末期には外国人がやって来るのと一緒に、いろいろな病気が日本に持ち込まれ、困った事態も起きています。

 

その一例はコレラです。文政5年(1832年)と安政5年(1858年)の2回、コレラが日本全国で猛威をふるいました。

 

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※これはコレラを獣に模した当時の風刺画です。大変な脅威だったそうです。

 

このとき、漢方などの従来の処方では対応できず、右往左往した人々は、それまで体験的に効用があることを知っていた、すっぱい梅干に頼ったのです。

 

江戸時代、「梅」が人々に信頼されていたことは、富士川沸著『日本疾病史』にある次のような描写からもうかがえます。

 

「元禄12年のころ、江戸にて、古呂利(コロリ)という病はやり、今月流行す、早く南天の実と梅千を煎じて呑めば、その病を受けず、さもなければ、ソロリと煩って古呂利と死すとて江戸中、南天の実と、梅干を煎じて飲みしという……」

 

コレラ退治に大活躍した梅干は、明治時代になっても赤痢発生時(明治17年、26年)にその予防と治療に使われて効果的だったこともあり、副食(おかず)としても以前にも増して日常的に食べられるようになりました。

 

そして、日清・日露戦争をはじめ、その後の戦争でも、食薬品である副食品として、梅は引っ張り蛸の如く様々な場面で人々に愛食されてきました。

 

 

ところで、梅が持つ栄養・対菌効果を十分に引き出せるのはご存じ梅肉エキスです。

 

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その作り方は、文化14年(1817年)に出た衣関順庵著『諸国古伝秘方』に紹介されています。

 

梅肉エキスは、梅の実の加工品としては最高位にランクされるべきもので、大正末期には量産が可能になっています。

 

そして、太平洋戦争で衛生医薬品として軍部に採用されたため、多くの兵隊をマラリアなどの熱病から救いました。

 

抗菌作用で食中毒を防ぐ

 

ところで、科学が進歩しても、私たちの周りにはいろいろ危険な要因があります。日常の食生活においても、ちょっと油断すると食中毒が起こります。

 

衛生面の不注意から食中毒は発生するわけですが、前述しましたように、梅は食中毒に対して強力な殺菌作用をもっています。

 

代表的な食中毒菌・腸炎ビブリオに対する、梅肉エキスの抗菌作用を調べた結果によりますと、

 

  1. 腸炎ビブリオ菌に対して、梅肉エキスは一%濃度で抗菌作用を示した
  2. 抗菌作用を発揮する有効成分はクエン酸である
  3. 梅肉エキスの抗菌作用は、胆汁の主成分であるコール酸との共存下で発揮される
  4. 梅肉エキスは、弱アルカリ性の腸内ペーハーを下げる

 

・・・等々が明らかになっています。

 

体内に入った菌はふつう、胃が健康で十分な胃液が分泌されていれば、その強い酸(胃液)でやっつけられてしまいます。

 

しかし、胃の働きが弱っていたり、疲れがたまっていたりすると、胃の殺菌力は弱くなり、菌は生きたまま腸へ侵入します。一度そうなると腸内は弱アルカリ性の環境で殺菌作用がないため、菌がどんどん増殖し、下痢や腹痛などの食中毒症状を起こします。

 

 

梅肉エキスに豊富に含まれる有機酸は、腸内の弱アルカリ性の環境を、 一時的に酸性にし、殺菌作用を発揮するわけです。殺菌作用の立役者はクエン酸です。

 

梅肉エキスが持っている殺菌効果については、これまで数多くの科学的な実験を行ない、その効用を証明してきました。

 

枯草菌(腐敗菌)、大腸菌、黄色ブドウ球菌(食中毒菌)などに対し、数百倍に薄めた梅肉エキス水溶液でも強い殺菌力を示すことが確かめられていますし、赤痢菌やコレラ菌の増殖を抑えることも次項で示すように明らかになっています。

 

家庭生活に限らず、海外旅行などでひどい下痢をしたときに、梅肉エキスが有効なのは、梅肉エキスに含まれる強力なクエン酸の優れた殺菌作用によるものなのです。

 

科学的に解明されている梅の殺菌作用

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梅については、古くからさまざまな効用が伝えられていますが、これはすべて体験に基づくものです。

 

科学的な分析が不可能な時代では、それもやむを得ないことでした。しかし、現在では、これまで梅の効用(たとえば抗菌・殺菌効果など)とされてきたことが、財団法人・梅研究会の依頼による実験で科学的に証明されています。

 

まず、東京薬科大学によって、梅の偉効がいろいろと解明されました。その実験結果を、順を追って紹介していきましょう。

 

 

昭和52年、和歌山の有田市でコレラが発生し、そのとき町中のすっぱい梅千が売り切れるということがありました。これをきっかけに、すっぱい梅干と梅肉エキスの効能が調べられました。

 

実験は、まず、大腸菌、黄色ブドウ球菌、枯草菌について行われました。それらの菌を寒天平板培地に接種し、その中央にすっぱい梅干を置いて孵化器で培養し、24時間後にその菌の成育状態を観測しました。

 

すると、寒天平板培地に置かれた梅干の周囲に、菌の成育していない阻止円ができていることが確認されたのです。

 

さらに、48時間後には、菌の成育していないその阻止円が、より明確になっているのが認められました。

 

この実験結果を受けて、次は梅肉エキスを用いた実験が行われ、その増殖阻止円(抗菌力)がくわしく調べられました。

 

梅肉エキスを溶かした液体培地で37度、18時間培養したところ、大腸菌と枯草菌は梅肉エキス濃度0.16%以上で、また黄色ブドウ球菌は0.32%以上で、菌の増殖が抑え込まれることが判明したのです。

 

大腸菌や黄色ブドウ球菌などは、耳にしただけで不安に感じる人も少なくないかもしれません。

 

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しかし、これらの悪菌に対し、梅肉エキスが非常に強い抗菌作用を発揮することも明確になりました。

 

昭和63年には、腸炎ビブリオ菌に対する梅肉エキスの抗菌作用の実験が行われました。これは、生食の多い日本において、細菌性食中毒を考慮に入れた実験です。

 

実験はいろいろなパターンで行われましたが、ポイントだけで紹介しましょう。

 

まず、梅肉エキスを希釈した液体培地で37度、さらにここに胆汁酸ナトリウムを0.5%添加して培養したところ、10分以内に生菌数は激減し、20分以内には菌がほとんど死滅したのです。

 

また、梅肉エキスの代わりに、梅肉エキスに含まれるクエン酸を0.3%使って実験が行われたところ、同様の結果が得られました。

 

ところが、クエン酸の代わりにリンゴ酸や酢酸にした場合や、クエン酸抜きの胆汁酸単独では、効果は認められなかったのです。

 

要するに、この実験では、梅肉エキスの持つクエン酸と胆汁酸との共存下のみ、細菌性食中毒の原因となる腸炎ビブリオ菌が死滅することが判明したのです。

 

さらに、平成8年には、病原性大腸菌0157が猛威をふるい、多くの感染患者と死者を出すという悲惨な出来事が起きました。

 

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そこで、再度、梅肉エキスが0157に対して効力があるかどうかの実験がされました。梅肉エキスに効果があることがわかれば、多くのo157を心配する人々の強いサポート役となります。

 

同時に、病院内で感染しやすいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌などに対しても、梅肉エキスがどのような効力を示すのかを調査が行われました。

 

実験は、病原性大腸菌O157をはじめ、前述のMRSA、チフス菌、赤痢菌、コレラ菌、枯草菌など12種類の菌に対して、梅肉エキスがどのような作用をするのかを調べるというものです。

 

その結果、すべての菌は、梅肉エキス濃度0.5%以下で発育が抑えられることが判明したのです。

 

O157はもとより、抗生物質も効かないという怖いMRSAにも、梅肉エキスは強力な抗菌作用があったというわけです。実に驚くべき結果といえますね。

 

 

日常のしっかりした食中毒予防が肝心

 

さて、食中毒にかからないためには、日常の衛生面での気配りが非常に大切です。食中毒の原因となる悪菌には、感染型の腸炎ビブリオ菌やサルモネラ菌属、毒素型の病原性大腸菌01157やブドウ球菌、ボツリヌス菌などいろいろなものがあります。

 

日頃の食中毒予防には、表413に示した原因、菌の特徴、潜伏期間、予防と対策などを知り、十分に注意することが肝心です。

 

ただ、食中毒の予防はこれ一つで万全ということはありません。体に侵入する悪菌は、一つだけではないからです。

 

いくつもの食中毒対策を常に考えておくことが必要ですが、梅肉エキスは誰でも簡単に使用でき、しかも前項でご説明しましたように、性質の違ういろいろな食中毒菌に対して優れた抗菌力がありますから、大いに利用していただきたいものです。

 

応急処置としては、まず最初に梅肉エキスを五グラムほど飲み、 1時間後にもう一度、3グラム、さらに一時間後に3グラム飲むとよいでしょう。

 

また、有名な「梅丹エキストラゴールド」の場合は、最初に30粒、 一時間置きに2回、20粒ずつ飲むことをお勧めしておきます。

 

食中毒予防は、日頃の健康保持が基本です。そのために、梅肉エキスを常用して、食中毒菌に負けない免疫力をつけておくことが大切です。