人の体は食べ物が形作る

人の体は食べ物が形作る

 

本来、人間の体にはかなりの免疫力があります。

 

一般的に、健康な人は多少の悪菌は排除しますし、病気になっても自然に回復する力を持っています。また、多少のケガなら、自然に治癒するケースが少なくないのは誰もが体験していることでしょう。

 

しかし現実の問題として、健康を損ねる要因は依然として取り除かれていませんし、むしろ悪化しているといってもよいかもしれません。

 

冷暖房完備は快適な環境をもたらしますが、あくまでも部分的なものであり、自然環境との関係でいえば不自然さを増すことになります。

 

また、「食」をめぐる環境も悪化の一途です。農産物や魚介類にはたくさんの薬剤が使用されているケースが多いですし、食品加工では各種の化学的な合成食品添加物が使われているという安全性の問題もあります。

 

社会生活が豊かになったせいか、健康に良いかどうかより、外観の良さ、日あたりの良いものが好まれるようになり、旬というものもなくなりました。

 

私の父はいつもこう話していました。

 

「人間の体は頭の先から足の指に至るまで、食べ物が形を変えた」

 

私も、まったくそのとおりだと思います。毎日いただく食べ物は、体内で消化吸収され、エネルギーに転換し、人間の血や肉となります。

 

どんな食べ物を食べるのかが、人間の体を健康にも不健康にもするのです。

 

昨今は、老若男女を問わず「美食」の傾向にあります。食品も多彩になり、遠い海外から数多くの食品が輸入されています。

 

食環境が豊かになるのはけっこうなことですが、価格面で国内産より安いということで輸入された野菜などに、基準値を上回る農薬が残っているというケースがよくあります。

 

昔は「身土不二」といい、「十里以内で採れた旬のものを食べていれば健康だ」といわれていました。

 

それは、人間が生活している場所と自然環境や季節が、健康と密接に関係していることを意味しています。

 

各種の野菜や魚介類は、季節ごとに食べ頃があります。いわゆる「旬」がその最もおいしい時期というわけですが、季節物の食品には、その季節に人体が健康を保つために必要なものが含まれているのです。

 

たとえば、いまは一年中出回っているトマトやキュウリも、本来は体を冷やす食品ですから、暑い夏に収穫され、暑い夏に口にしたものでした。

 

「食」による健康法

 

地元で採れる旬の食品を効果的に食べることで体調を管理するのが、食べ物を″薬″として利用する″食薬品″という考え方です。

 

食薬品は、長い間の体験を積み重ねて薬用効果があるとわかって、人々に愛用されるようになったのです。

 

たとえば、蒸し暑い日本の夏には、食欲もなくて夏痩せの症状に悩む人も少なくないでしょう。

 

大昔は夏痩せなどなかっただろうと、いまの人は思っているかもしれませんが、夏痩せはかなり昔の時代からあつたようです。

 

いまから千三百年ほど前にできたといわれる日本の最古の歌集『万葉集』に、大伴家持の次の一首があります。

 

「石麻呂に我れ物申す 夏痩せによしといふものぞ 鰻捕り喫せ」

 

この歌は痩せた人に対しての歌ですが、大伴家持は「石麻呂殿、夏痩せには適薬だといわれる、鰻を捕えてお食べなさい」と歌っています。

 

現在でも夏場、土用の丑の日には鰻の宣伝が盛んになります。鰻で精をつけて暑い夏を乗りきろう、というわけです。

 

奈良時代から「夏場には鰻が適薬」といわれていたとは驚きですが、同じように昔から日本人に広く愛用されてきたのが、いまでも代表的な食薬品であるです。

 

梅は『万葉集』では桜より数多く和歌の題材とされていて、千五百年近く前に中国から伝えられた鳥梅は、日本の食薬品の先駆けの一つです。

 

鳥梅は青梅の実からつくられた薬で、赤痢などの疫病に対して大昔から用いられ、いまでも使われています。

 

また、梅干は、長い歴史と伝統をもつ、日本人にとつて最もポピュラーな食薬品として知られています。

 

すっぱい梅千の効用は数かぎりなくあります。効用にかんしては後述する「梅肉エキスの効用」に詳述していますが、多くの人は殺菌効果や血液浄化、活力増進、疲労回復などの効用を思い起こすでしょう。

 

体の基幹部分を良くする働きのあるすっぱい梅干は、日本人の食生活に欠かせない必需品といっても過言ではありません。

 

とくに、酸性食品に偏りがちな昨今の食生活では、強力なアルカリ性食品のすっぱい梅干は頼もしい味方です。

 

ただし、梅干といっても現在市販されているものは、調味料や合成着色料などが使用されたものがほとんどですから、音ながらの作り方でできたすっぱい「むしり梅千」などを選んで食べることが肝心です。

 

そのほか、梅干の黒焼きも古くから知られていました。これは、梅干を素焼きの壺に入れて密封し、炭火を敷きつめた穴に入れ、壷全体をおおうように炭火を入れます。

 

この炭火が自然消火するまで壷ごと蒸し焼きにした末にできるのが、梅干の黒焼きです。カゼや吐血、血便、日や舌の荒れなどに卓効があるとされています。

 

黒焼きの簡単な作り方としては、梅干四〜五個をアルミホイルで二重に包み、直火で梅千が黒くなるまで焼くという方法があります。